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おすすめの1冊(上)


かるてっとん座談会

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 おすすめの1冊 (上)       


 ヤギ爺 [×] ミスター・ペン


「ミスター、ミスター、なんかオススメの本ないやろか?去年、読書の秋に読書し忘れてん。せやから夏のうちにもう読み始めとこう思って。」

「ほう、真夏に読書か。なかなかいいじゃないか。で、どんなのが読みたいのかね?」

「そやな、飽きひんやつがええな。次々事件が起きるやつとかな。」

「次々に事件ねえ…。それなら推理小説だな。連続殺人事件ものなら肝試し代わりに“真夏の夜”にピッタリだぞ。」

「いやいや、夜は目ぇ疲れんねん。昼間読みたいわ。明るい殺人事件がええわ。」

「…明るい?殺人で?」

「なんや、ややこしいトリックっちゅうのは肩凝るしな、そんなんもいやや。あと、人が多過ぎて誰が犯人か考えるんのもしんどい。わかりやすいの、あらへん?」

「無茶苦茶だな。しかし、まかせたまえ。“読書マイスター”と名乗っているのは伊達じゃないってところをお見せしよう。」

「さすが、ミスター!」

「やあ、ありがとう、ありがとう。まず、わかりやすいといえば倒叙推理小説だ。」

「とうじょ?なんや、それ?」

「『刑事コロンボ』みたいに、最初から犯人がわかっていて、犯罪を犯す犯人側から始まる小説だ。」

「おう、それそれ!コロンボみたいなん、考えんでええから好きやわ。」

「次に、殺人に“明るい”はありえないが、陰湿でもなく残酷でもないのにしよう。それでいて飽きないとなれば……、巻き込まれ型だな。しばし待て。」

・・・・・・・・・・・・

「ヤギ爺!いいのがあるぞ!『フレンチ警部と毒蛇の謎』だ!」

「ほう、フランス料理みたいやな?なんやわからんけど、毒蛇かいな、ええやん、どんなん?」

   【フレンチ警部と毒蛇の謎】F・W・クロフツ

「これはな、恐妻家の動物園の園長がな、暴言と浪費ばかりの妻へのストレスをギャンブルにつぎ込んで、お金もギリギリ、家庭もギスギス。かといって妻を殺すわけじゃない。なぜなら園長には、独り身で金持ちで病身で高齢の叔母さんがいるからだ。数ヵ月しのげば遺産が入るだろうと、それだけをめちゃめちゃアテにして過ごしてるんだ。」

「なんや、同情したいような、したくないようなやっちゃな。」

「そう、園長という地位もあり世間体の見栄えもいい。けれど小心者で優柔不断で人目を気にしてばかりで、スカッとした部分のない男だよ。そんな男が、ある日、妻とは真逆のおしとやかな女性に一目惚れするんだ。」

「おっ、ロマンスもあるんかいな!」

「うむ、今のパッとしない日常がずっと続くような気がしていた中年男が、数十年ぶりにときめいちゃったのだ。」

「どえらい奥さん持ちじゃ、そりゃあ、しゃあないわ!」

「金の余裕もないけれど、彼女に会いたい、気に入られたい。そうなると、男ってのはいくつになってもバカさ。デートするために借金しては、ギャンブルでたまたまツキがついて返す…って綱渡りみたいな生活をし出すんだ。」

「ツキがくるなんて、むしろ才能あるんちゃう?」

「ん?妻に気づかれないように平静を装っては抜け出し…金を借りては近所の人に遭遇しないようにレンタカー借りて遠出でデートし…ギャンブルで一山当てては借金を返す……うむっ、確かに才能あるな!ま、とにかくだ、ある時、彼女が職を失ってしまい、田舎に帰ると言い出すんだ。」

「ほう、さては、ついに鬼嫁やってまうんか?」


この続きは おすすめの1冊(下)に続きます。一切、ネタバレしませんのでご安心を。




 かるてっとん(Quartetton)フォトグラフィー  Instagram【quartetton.halfwayで公開しています。



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