おすすめの1冊(下)
かるてっとん座談会
おすすめの1冊(下)
「待て待て。とにかく彼女の前ではかっこつけていたいし、頼られたい。何より彼女だけには“俺が必要”って思わせたい。だから、いずれ入ってくるであろう叔母さんの遺産を担保に、彼女との家を買っちゃうんだ。」
「しょーーーーーーもなっ!」
「おかげで、叔母さんはいつごろ死ぬだろうかと、何度も主治医に探り入れに行くんだ、さも叔母さん思いの甥っ子ぶって。」
「アホや…。」
「ところが叔母さんは一向に死なないもんだから、借金で頭抱えるんだ。」
「ほいで、とうとう叔母はん、殺しよるんか?」
「いいや、まだまだまだ。まだここまではほんの導入だよ。」
「な、なんやて!?」
「ふふ、世間体を気にする気弱な恐妻家で、女の前ではかっこつけつつ、裏では金策も生活もその場しのぎの無計画。なまじっか常識的で優しいゆえに、思い切ったことが何一つ出来ない中年男が、どうして犯罪者になってしまうのか?そして、そもそも誰が殺されるのか?」
「誰殺すん?どうなんの?な、な、言うてえや。ついでにフランス料理だかなんだかは、いつ出てくん?それに毒蛇って出てこんやん?」
「『毒蛇の謎』ってからには、ちゃんと毒蛇は登場するさ。いいかい?動物園にも毒蛇はいるし、男はそこの園長だ。だが、この小説のタイトルのフレンチ警部は、まだ一向に出てこない。なぜかわかるかい?なぜなら、まだなーーんにも事件は起きてないからさ。」
「……!?ほんまや!ほんま、まだなーーーーんも事件起きとらんやん!もう盛りだくさんに思うてたわ!」
「いやいや、これからどうしても犯罪者にならなきゃいけない状況に追い込まれていくのさ。でも、叔母さんは期待通り病死するよ。」
「ほな、遺産もろて一件落着ちゃうん?」
「なんのなんの、クロフツはすごいぞ、ヤギ爺。このあと二転三転して、ついにやっと犯罪が起きるんだ!」
「もう、おなかいっぱいやで?毒蛇とフランス料理、入らへんわ!」
「いやいや、メインディッシュはこれからだよ、ヤギ爺。気弱なやつほど見ててドキドキするものはないさ。とにかくこの園長の危なっかしさが秀逸さ!なんてったって、この男は主犯じゃなくて、はめられて片棒担がされる災難男なんだから!」
「なんやて!?主犯って、ほかにどんなん出てくん?誰が誰を殺すん?園長は何しよるん?あーー、気になってしゃあないわ!」
「だろう?ぜひオススメするよ。」
「だろう?ぜひオススメするよ。」
「ミスター、おおきに!これ読んでみるわ!」
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