ヤギ爺の思いつき
かるてっとん
マダム・ジラフのサロンにて ~ヤギ爺の思いつき~
「あらん、ヤギ爺、いらっしゃ~い。お久しぶりじゃなくって?」
「いやあ、マダム、堪忍なあ。ミスターからおもろい本教えてもろてな、なんや夢中で読んどったん。」
「あらまあ、飽きっぽいヤギ爺が読み切るなんて、そんなに面白いお話?」
「推理小説やったん。それもな、犯人側から書かれてん。なんや世の中、悪いことすんにも、いろんな理由あんねんなあ。ゴクッ、それにしてもこの紅茶、うまいなぁ、好きやわぁ。」
「あら、よかった。ベルガモットの紅茶よ。ヤギ爺のレパートリーに入れておくわね、うふふ。それはそうと、ヤギ爺はすーぐ何でも影響受けちゃうでしょ?そんな本を読んだなら、なんか悪いことでもしてみたくなっちゃったんじゃなくって?」
「いやいや、ようせんわ。だってな、最後の方にな、やっと警部はん出てきたんやけど、警察っちゅうんはたいしたもんやで。あんなんに目ぇつけられたらおしまいやし、胃にも心臓にもしんど過ぎるわ。」
「あらん、じゃあ今回は読んでおしまい?」
「いや、そりゃ読んどるうちにな、なんかこういうん、やってみたいなあ…なんて、そりゃ思うがな。」
「うふふ、そうこなくっちゃ。なにか犯罪やるわけじゃないとすると、今から警察は無理だから、探偵さん?」
「まさか、あんなんようせんわ!あんなぁ、探偵するんやなくて、探偵小説っちゅうんを書いてみよか思てん。」
「‥‥‥‥軽~い思いつきで、世の中の本書きさんを敵に回すような無謀なところ……嫌いじゃなくってよ。生みの苦しみなんて熟考力は、そもそもお持ちじゃないものねえ、うふふ。」
「本は勢いやで、きっと。みんな勢いで書いてるんちゃうん?せやからあんなおもろいんやろ、ちゃうか?」
「‥‥‥‥勘違いも甚だしいところ……そこも嫌いじゃなくってよ。でも、せっかちなヤギ爺に勢いついたら、1ページ目で事件起きて、2ページ目で犯人捕まる感じの本になりそうねぇ。」
「あかんかぁ、そりゃ、勢いあり過ぎやなぁ。ほな、ちぃ~っとも事件起きひん探偵小説はどやろ?」
「世間では、それを廃業っていうと思うけど、うふふ、そんな展開の見通しがつかないお話は、かえって興味そそられるかもねえ?」
「ええ思うか?ええやろ?ええなあ、そうしよ、そうしよ、思い立ったが吉日や!」
「良いとはひとことも言ってないけれど、うふふ、ヤギ爺がやりたいならあたしはいつだって応援するわ、他人事ですもの、うふん。」
「ええねん、ええねん、たぶん。なんでもやってみるんが大事やろ、きっと。よっしゃ、主人公を考えな!主人公が決まれば勝手に動き出しよるで、たぶん。そういうもんやねん、きっと。ゴクッ。」
「たぶんだの、きっとだの、おおいに不安なのね、うふ。でも、いいんじゃなくって?今までだって何一つやりとげたことないんですもの、思いつくけどやりとげない…こそ、ヤギ爺の真骨頂だわ、あはん。で、イメージは浮かんできたかしらん?」
「ゴクッ、あー、ほんまうまい。‥‥‥‥ん?これや…、これやでマダム!なんやったっけ、このお茶?」
「ベルガモット?」
「そや、それや!ベルガモット…、ベルガモット…、ベルガモ…なんやかんやいうて、直感には自信あんねん!ベルガモット…・ヤマザキ…。!!ベルガモット・ヤマザキや!探偵の名前、ベルガモット・ヤマザキにするで!」
「なぜにヤマザキ…?」
「なんでもええねん、あかん、もう頭ん中でベルガモット・ヤマザキが動き出しよるわ!急いで書き留めな!ほな、マダム、ごちそうさんっ!」
タタタタタ…、バタン!
「あらら、飛び出してったわぁ、グッドラック~、うふふ。」
かるてっとんフォトグラフィー Instagram 【quartetton.halfway】にて公開しています。
かるてっとんフォトグラフィー Instagram 【quartetton.halfway】にて公開しています。
2018-07-10 11:21
nice!(0)
コメント(0)
コメント 0