ベルガモット探偵事務所①
かるてっとん
リトル・モグの隠れた才能
ベルガモット探偵事務所①
「あー、あかん、なーんも浮かばへん。」
「ヤギ爺、何してるの?」
「ヤギ爺、何してるの?」
「おう、モグ、おったんか。今、ちょっと忙しいから、いい子にしとってな。」
「本を書いてるの?」
「そうや、そやから、ちょっと待っててな。」
ベルガモット・ヤマザキは、ご機嫌ななめやった。
「ベルガモット・ヤマザキって、だあれ?」
「頼むわ、モグ。今、考えてんねんて。」
今日は腹がゴロゴロ鳴りよる。もう5回もトイレに行っとるのに、まだ治らん。
「ベルガモットさん、おなか痛いの?」
「つかみや、つかみ。これから事件起きんねん。いや、起きひんやったっけ?」
「何も起きないの?ベルガモットさん、トイレ入るだけ?」
「んなわけあるかいな。一応、ベルガモットはんは探偵なんやで。まあ、事件は起きそうで起きひんのやけど…なんか起こさな。あー、あかん、頭ん中で、会うやつ会うやつにベルガモットはんが勝手に『犯人はお前や!』言いまくっとるわ、どないしょ。」
「ねえ、もっとおしゃれな感じにしてあげたら?」
「はあ?おしゃれて…?」
「ちょっと書いてみてもいい?」
ベルガモット・ヤマザキは、寂しげにドアを閉めた。あいかわらずドア越しに流れる水の音は、羨ましいくらいに勢いに満ちている。まだ10時にもならないというのに、もう5回もくだしている。よりによって今日は、すこぶる腹の調子が悪い日のようだ。
「な、なんやとー!なんや、なんで?なんで?」
「こっちのほうが、おしゃれじゃない?」
「おしゃれとかなんとかは、ええわ!もっと書いてみいや、ほれ、ほれ!」
「ベルガモットさんは、飲み物は何が好きなの?」
「そんなんなんでもええよ、玄米茶でもそば茶でも水でもええから、もっと書いてみい!」
脱水気味なのか、妙に喉が渇く。すっかり体力の失われた右手で、そば茶の缶に手を伸ばした。急須にお湯を注ぎながら、いつも通りこれにしておくんだったと、今更ながら後悔した。
「なんやねん、モグ!なんやねん!すごいやんか、本書けるで、ほんまに!」
「そうかなぁ?ヤギ爺のがひどすぎるだけだよ。」
「ちゃうちゃう、直感には自信あんねん。モグには書く才能あるで。よし、わかった、くれたるわ!ベルガモット・ヤマザキ、モグにくれたる。生かしたっとくれ!」
「ベルガモットのヤマザキさん、くれるの?…うれしいのかわかんないけど、ありがと。」
「ええよ、ええよ、活躍さしたって。ええやつやねん、ベルガモットの兄ちゃん、ええやつやで、保証する!せやから、ほれ、もっと書いたれ、書いたれ!」
「うん、じゃあ、ベルガモットさん、ちょうだいね。ボク、仲良くなれそうだから。」
「よっしゃ、ほな、ここ座り。しっかり書いたれや。ほな、がんばるんやで。ほなな~。」
「‥‥‥‥行っちゃった。ま、いっか。じゃあ、ベルガモットのヤマザキさん、よろしくね。」
かるてっとんフォトグラフィー Instagram 【quartetton.halfway】にて公開しています。
2018-07-12 12:01
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